JavaScript による情報教育入門

教育機関での利用を考えていると思われる本で JavaScript を題材にしている珍しい本です。id:dankogai さんがプログラミング初心者は JavaScript をやると良いと度々言っており、JavaScript 関係でのプログラミング教育を考えていたところ、この本を発見しました。それでは早速感想を。

情報教育としての教材として本書がプログラミングや周辺知識に関しての解説を行っています。前半で理論部分を説明した後、中盤から JavaScript のコードを交えて DOM や他のプログラミング言語でも必要となる条件分岐やくり返しの説明が入ります。本書内での前提は OS が windows であることと、特殊なエディタは使っていないことです。この辺りは特別 PC に詳しくない人間でも使ったことがあるであろう為、挑戦意欲は減らないと思います。やはり環境を整える煩雑さは回避しないと教育には向いていないと思われますから。Linux がダメなわけではないです。むしろ UNIX 系 OS は間違いなく情報教育には必要であると思います。ですが、プログラミングを学習するというテーマを掲げている場合にはその他の些事に気を取られないようにすべきなんですよね。それが教本としての役割を前提にし、且つ対象者が情報教育に関して入門以前の知識しかないなら尚更です。その点で言えば windows PC は特に入手も難しくなく、買った段階でインストールも済んでいます。note pad に関しても最初から入っているエディタなので特に何もすること無く使えて、機能も全くと言っていいほど無い為に使用に戸惑うこともないでしょう。その点で言えば、良い意味で対象者を選ばない前提条件になっていると思います。シンプルな環境を前提にしているため様々な状況に置き換えて話が出来る点でも教材としては良いと思います。

話をもどしますが、前半の理論的な話が少々長いため序盤から眠さを誘う展開になってしまっていました。どうせなら初っ端からコードを書かせて解説、という流れでいいような気がします。でないとせっかく JavaScript とという見た目に訴えかける事が容易に出来る言語が勿体無いです。そこで興味を惹こうというのにその登場が後になって興味を失っては意味がないですしね。

中盤の構文解説と DOM を使いつつの JavaScript の出来ることの披露は少し関心出来る部分があるものの、基本的には JavaScript で無くても出来ることが解説されており非常に残念な印象を受けました。ハノイの塔とかソートアルゴリズムとかそういうパズル的な話は JavaScript でわざわざやらなくても他の言語(C とか Java)で解説しているものがあるのでやる必要は無いですね。そんなことやるんだったら Chrome の拡張アプリでも使って HTML, CSS, JavaScript の学習がてら正規表現等を使った DOM でのデータ処理をやった方が 100 倍は面白いと思います。

終盤も殆ど消化試合臭く、印象は変わりませんでした。大学の教科書のイメージが抜けなかったです。実際にこの教科書を読んで勉強すればプログラミングが出来るようになるかといえば、構文の解説も中途半端なため他に書籍を買う必要が出てきます。なので JavaScript を用いた教科書としての皮切りになった事が良かった位の評価でしょうか。後続の JavaScript を使った教科書が出てくることに期待、ですかね。